海底を探る技術
 


 マルチビーム測深機による水深測定

マルチビーム測深機は、海底の深さを測定するために使われます。船の底から音波(音響ビーム)を発射し、音波が海底にぶつかってはね返ってくるまでの時間を測り水深を計算します。船は左右の海中に扇形に複数の音波を発射しながら航行するため、陸地の航空写真測量のようにかなりの幅をもった海底を帯状に隙間なく測深できます。

この測深機は、次のような利点をもっています。

  • 海底を面的に測量するので、作業効率が良く地形を正確にとらえることができる。
  • 音響ビームが鋭いので細かい地形がわかる。
  • デジタル測量なので、コンピュータを用いて測量現場でリアルタイムにデータの処理を行い、測量と同時に海底地形図を作成することができる。


このため、近年マルチビーム測深機は広く使われるようになり、技術的にも実用の面でも著しい進展を遂げています。

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クロスファンビーム方式の基本原理
マルチビームの送波器と受波器は、直交するように船底に固定されています。この送波器から海底面に向かって、扇型に広がるビーム(ファンビーム)を発信し、直行する受波器も扇形のビーム形状で反射を待ち受けることにより、交点それぞれの測定値が得られることから、クロスファンビーム方式と呼ばれています。
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まず上の図のように海底に音波を発射します(transmit fan-beam)。次に受波ファンビーム(receive fan-beam)を用いて、海底に送ったファンビームののぞき窓を作ります。すると、音波の当たった海底のうち、のぞき窓の中に捉えた部分のみのエコーを得ることができるのです。つまり送波ビームと受波ビームのクロスした部分のビームを形作ったのと同じ事になり、これにより精密な測定ができることになります。これがクロスファンビームの基本原理です。

水深は、音波を発信してから海底ではね返って戻るまでの時間を計測して求められます。水深値はおおむね下の式によって計算することができます。

水深=(音波の片道伝搬時間)×(海中に伝わる音波の速さ)×cos(ビームの傾斜角)
現在、マルチビームは浅海用から深海用のものまで12kHz~500kHzの周波数の音波を使ったさまざまな機種が開発されています。調査目的と調査深度によって、異なる周波数の音波を使用するからです。たとえば、大陸棚等の海域を測深する場合には、100~200kHzの周波数を用います。そして150本前後のビームを発射し、0.5度の分解能で、水深の約3倍の探査幅をカバーします。浅海から超深海である11,000mの海域を測深する場合には、12kHz前後の周波数を用います。この時は、約120本のビームをもち、2度前後の分解能で、水深の3倍までの探査幅をカバーします。

海底地形図のモデル
相模湾奥部の海底の急斜面に発達する扇状三角州 
上の図は、神奈川県の酒匂川河口から相模湾奥部の海底の急斜面に発達する扇状三角州を捉えた海底地形図です。 この例のように、クロスファンビーム方式は、船が航行しながら、音波の送受信を繰り返すことによって、海底を面的に測深することができるのです。

 
 ■ 製品開発: MarineDiscovery, Visual3DX

当社は、マルチビームにより取得された測深データを、処理解析するソフトウェア「MarineDiscovery」シリーズを開発しました。

ピングファイル編集機能およびメッシュファイル編集機能を搭載し、効率よく精密なデータ処理・解析を実現します。また、地形データを3次元立体表示したり動画を作成するソフトウェア「Visual3DX」シリーズの開発も行っています。

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